欧米ヒットソングの完コピ音源を「カバー」と称して iTunes Store などで販売している例がある。権利者の許可が下りているとも思えない怪しい商品がなぜ野放しにされているのかわからないが、とにかく面白い。
そんな露骨なパチモンに騙される客なんてそうそういないだろうと思った人は、これを見てほしい。
「24 Hour Party Project」という企画名の偽コンピレーションがしっかりトップ10入りしている。
さらに意味のわからないことに、買った客が特に文句を言ってない。
安いから?
この時点ではまだ、「パチモンとわかったうえで、600円というお手頃価格に満足して買っているのかもしれない」と思っていた。中国の怪しい市場で3000円のヴィトンを買うのと同じに違いない、と。
だがこのシングルチャートはどうだろう。
なんとここにもパチモンが2曲入っている。1曲150円というまったく同じ価格で本物が売っているのだから、「ケチって安いほうを買った」説はもう通用しない。面白がってわざわざ偽物を買ったのでなければ(実際に私も面白がって買うかもしれない)、騙されて買ったことになる。本物のほうはダンス部門ではなくポップス部門に登録されているため、探す場所を間違えればそういうミスもあるだろう。問題はそのあとだ。買ったあとに「騙された」と気づくならともかく、気づいてない。「どっちでもいい」のだ!
市場の判決「どちらでもよい」
偽物のほうを試聴してみれば納得すると思う。原曲を聴き慣れていたり、もともとボーカルの声質を把握していればさすがに違いがわかるが、一度や二度どこかで耳にしたくらいでは違和感をおぼえない気もする。騙された購入者の勘の悪さだとか、偽物の完成度がどうとかいう話ではない。決定的に「どっちでもいいレベル」の音楽であることが証明されてしまった。
データファイルがまるごと複製されたならともかく、ボーカルやトラックまで含めた音楽自体がいとも簡単に模造され、どっちでもいいリスナーに買われていく。もともとその程度の音楽を、オーディオデータとして売るビジネスにどれほど無理があるか。ファイルの違法コピーなら堂々と規制している業界側も、ここまで平然と売れてしまう完コピ音源に関しては1、取り締まるにしても恥ずかしすぎるのかもしれない。